額田戎神社のゑびす松
額田戎神社のゑびす松
むかし額田村に、樹齢数千年の大きな松の木がありました。その松の木のふもとに、一軒の古びた百姓家があり、老人が一人さびしく住んでいました。
妻もなし子もなし、若いころからの極道三昧で親の残した田畑もみな売ってしまい、村でも偏屈じじいとして付き合う者もありません。
その変わり者の老人が、どうゆうわけかゑべっさんだけは、信心していて何があっても毎月欠かさず西宮戎までお詣りしていました。
若いころの不摂生のせいで年を取るにつれて弱ってゆき、とうとう倒れてしまい月参りすることが出来なくなってしまいました。
たとえ寝たきりであろうとも、どうにかしてゑべっさんにお詣りしたいものだと思い詰め、家の寝間から見える大きな松の木の根元に戎明神の祠を建てました。
数年後、老人は息を引き取ったのですが、最後の日に枕元に大きな葦舟が現れ、大きな鯛を抱いたゑべっさんが降り立ち、じいに・・・
「ようがんばったな。ワレは若いころはどないしょもないヤツやったけど、こないして悔い改めて信心を続けたことはまことに立派なことや、せやからわしが直々に迎えに来たよってこの葦舟にのって一緒に常世国(とこよのくに)へ行こ」といって、老人のたましいをのせて船出しました。
この老人の祠は、のちに額田の戎神社になり、そばの松の木は、終戦前まで戎松と呼ばれ境内に残っていたそうです。
日付 | 2019-06-07 |
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